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犬の歯と呼吸の意外な関係性|小型犬に多い症状と正しいケア方法
広尾・恵比寿・西麻布・南麻布を中心に診療を行う「広尾テラス動物病院」です。
犬の歯と呼吸には意外な関係があることをご存じでしょうか?犬の歯の健康は、単に食事を楽しむためだけでなく、呼吸器系の健康にも深く関わっています。特に小型犬では歯周病や歯の欠損といった歯のトラブルが多く、それが原因で呼吸器疾患を引き起こすケースも少なくありません。こうした疾患を放置すると、犬にとって苦痛が大きくなるだけでなく、命に関わる深刻な病気につながる可能性もあります。
今回は犬の歯と呼吸器の関係性について、口腔疾患や呼吸器疾患の症状、飼い主様がご家庭で行えるチェックポイント、正しいケア方法などをご紹介します。
■目次
1.口腔疾患と呼吸器疾患の関連性
2.呼吸器のトラブルについて
3.歯のトラブルについて
4.症状に気づくためのチェックポイント
5.知っておきたい正しいケア方法
6.よくある質問(Q&A)
7.まとめ
口腔疾患と呼吸器疾患の関連性
口腔疾患とは犬の口の中で発生する病気の総称で、代表的なものには歯周病があります。一方で、呼吸器疾患は鼻、喉、気管、気管支、肺といった呼吸器系の病気を指します。
これらは一見すると無関係なように思えますが、実は密接に関係しており、口腔内で発生した細菌が気道や肺に侵入することで、呼吸器疾患を引き起こすことがあります。
<歯周病と気道感染の関係>
歯周病は歯垢や歯石が原因となり、歯周病菌が歯茎や歯周組織に炎症を引き起こす病気です。進行すると、歯周病菌が唾液や血液を介して体内を巡り、気道や肺にも影響を及ぼすことがあります。具体的には、歯周病菌が気道に侵入すると気管支炎や鼻炎を引き起こし、さらに重症化すれば肺炎へと進行する可能性もあります。
また、歯周病菌は免疫力が低下した犬に特に影響を与えやすく、高齢犬や他の持病を持つ犬では注意が必要です。こうした疾患のリスクを軽減するためにも、日頃の歯のケアは非常に重要です。
<誤嚥性肺炎のリスク>
高齢犬では誤嚥性肺炎が大きなリスクとなります。誤嚥性肺炎とは、食べ物や唾液に含まれる細菌が気管に入り込むことで肺に炎症を引き起こす病気です。特に歯周病がある犬では、唾液に含まれる細菌の量が増えるため、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。この病気は進行が非常に早く、命に関わる場合もあるため、飼い主様は細心の注意を払う必要があります。
呼吸器のトラブルについて
呼吸器疾患はどの犬種でも発症する可能性がありますが、小型犬や短頭種では特にリスクが高いことが知られています。小型犬は気道が細く、年齢とともに気管や肺のトラブルが起きやすくなります。また、短頭種(パグやフレンチ・ブルドッグなど)は鼻や喉の構造上、呼吸器系の病気にかかりやすい特徴があります。代表的な呼吸器疾患は、以下が挙げられます。
<気管虚脱>
気管がつぶれることで空気の通り道が狭くなり、呼吸が困難になる病気です。症状として「ガーガー」というアヒルのような音を立てる呼吸が見られます。特に運動後や興奮時に症状が悪化し、ひどい場合は酸素不足で失神することもあります。小型犬や短頭種に多く見られる病気で、適切な治療が求められます。
<気管支炎>
気管支に炎症が起きることで発症する病気で、原因は感染症やアレルギーです。症状として咳や呼吸困難が挙げられ、放置すると肺炎に進行する危険性があります。特に免疫力が低下した犬や高齢犬では重症化しやすいため、早期診断と治療が重要です。
歯のトラブルについて
小型犬では、顎が小さいことから歯並びが悪くなりやすく、以下のようなトラブルが多く見られます。これらの問題を放置すると、痛みや感染症だけでなく、食事の摂取に支障をきたすこともあります。
<歯周病>
前述したように、歯垢や歯石が原因で歯茎や周囲の組織に炎症を引き起こす病気です。症状として、口臭、歯茎の出血、よだれの増加、食欲不振などが挙げられます。進行すると歯が抜け落ちたり、全身性の感染症につながったりすることもあります。
<不正咬合(噛み合わせの異常)>
噛み合わせに異常がある状態で、特に短頭種ではアンダーショット(下顎が出ている)やオーバーショット(上顎が出ている)がよく見られます。それにより、食べ物をうまく噛めなかったり、歯茎を傷つけたりすることがあります。
<歯の欠損>
小型犬では、生まれつき一部の歯が欠けているケースが多く見られます。また、歯が歯茎の中に埋まっている場合もあるため、定期的な検診が重要です。
症状に気づくためのチェックポイント
口腔疾患や呼吸器疾患は、早期発見が重要です。飼い主様が日常的に以下のポイントを観察することで、異変に早く気づくことができます。
■呼吸器疾患のチェックポイント
<咳の頻度>
季節性はあるか、1日にどのくらい咳をするか
<運動時の様子>
散歩後や興奮時に咳をしていないか、「ガーガー」と音を立てていないか
<寝ているときの呼吸音>
横になったときに「ゼーゼー」と音を立てていないか、呼吸が止まることはないか
<食事中の変化>
食べる時間が長くなっていないか、よだれに血が混じっていないか
■口腔疾患のチェックポイント
<食べ方の変化>
片側だけで食べていないか
<口臭>
腐った魚のようなニオイがしていないか
<歯茎の色>
赤く腫れていないか、出血していないか
<顔をこする仕草>
歯や口に違和感を覚えていないか
知っておきたい正しいケア方法
■呼吸器のケア方法
<室温と湿度の管理>
快適な室温(20~25℃)と湿度(40~60%)を保ちましょう。
<散歩時間の調整>
短頭種や呼吸器疾患を持つ犬には、短時間かつ無理のないペースで散歩させることが重要です。
<喫煙環境の注意>
タバコの煙は呼吸器疾患のリスクを高めるため、犬がいる環境では禁煙を心がけましょう。
■歯のケア方法
<正しい歯磨き>
毎日少しずつ歯磨きに慣れさせましょう。初めは歯磨きクロスを使い、徐々に歯ブラシに移行するのがおすすめです。
<おもちゃの選び方>
年齢や犬種に合った硬さのおもちゃを選び、硬すぎるものは避けましょう。
<定期的な検診>
歯周病やその他の口腔疾患を早期に発見するため、定期的に動物病院で口腔ケアを受けましょう。
よくある質問(Q&A)
Q:犬の咳がどれくらい続いたら病院に行くべきですか?
A:1週間以上咳が続く場合や、他の症状(元気消失、食欲低下)が見られる場合は早めに受診しましょう。
Q:歯が欠けているけど、痛がっていないから大丈夫ですか?
A:犬は痛みを我慢する傾向があるため、欠けた歯が問題を引き起こしている可能性があります。放置せずに動物病院で診察を受けましょう。
Q:留守番時に硬いおもちゃやガムを与えても大丈夫ですか?
A:硬すぎるおもちゃやガムは歯の破折の原因になります。噛み切れる素材のおもちゃやガムを選びましょう。
まとめ
犬の歯と呼吸には密接な関係があります。歯周病や歯の欠損といった口腔疾患が原因で呼吸器疾患を引き起こすこともあるため、日頃の観察やケアが大切です。
飼い主様が愛犬の小さな変化に気づき、正しいケア方法を実践することで、愛犬の健康を守ることができます。日常的な観察と定期的な動物病院での検診を組み合わせ、愛犬が健康で快適な生活を送れるようにサポートしていきましょう。
広尾・恵比寿・西麻布・南麻布中心に診療を行う「広尾テラス動物病院」では定期健診に力を入れており、病気の予防と長期健康維持のお手伝いをしております。
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